―――今年も幻想郷に夏が来た。
初夏独特の、カラッとした空気が風に草木の渋い香りを際立たせ
澄んだ初夏の日差しも、辺りの風景を鮮やかにした。
―――――じゃあ、明日は一番にここに来るぜ
巫女の隣で、少女は言う。
無邪気な微笑みで彼女が投げ掛ける言葉は、彼女を嬉しくさせ、同時に寂しくもさせた。
―――――……ごめんね
巫女は、少女の優しさを素直に受け止めることが出来ない。
他の娘にも優しいんでしょ?怖くて訊けないからこそ、少女はその想いを抱き続けている。
巫女の信じた親友の少女は、彼女と、彼女と過ごす時間を、この上なく愛していたのに。
キラキラとした初夏。美しい情景の中で、お互いが魅かれあい、互いの愛を重ねる中、二人の少女は悩み、それでも距離を縮めて行く。
二人を応援する者も、実はいた。
「――――うん。親友にまで素っ気ない私に、ここまでしてくれるなんて」
なのに、巫女はあまりに勿体ない勘違いをしていた。そんな勘違いさえなければ、二人の間に障壁など存在しなくなるのに。
幻想郷に訪れた初夏。
今年もまた、風鈴を付け、二人の願い事を叶えることは出来るのか。
――――この大空の下で
東方Project レイ×マリ(霊夢×魔理沙)
この大空に放った一つの約束
2009/06/21 茨城県内即売会「C−3 15th」スペース30にて配布
定価 300円