日が落ちてから暫く経った。
行燈の光り一つしかないうす暗い研究室で、私は一人その後のことを反芻していた。
 
 
あの後、姫は私に「鈴仙をやっぱり愛してるの?」と抱かれたまま顔を挙げて儚さを感じさせる声で聞いた。そんな口調で質問されても、やはり姫のお陰でしっかりと決めることの出来た自分の中の気持ちは変わらなくて「…ええ」と、私は強い意志を込めて答えた。
すると、姫は「そう…じゃあ私は妹紅のところに行くね」と言って私の腕の中から離れた。
引き留めて欲しかったのだろうか、自分から離れておきながらそう言う姫の様子には、永く一緒にいる私にしか分からない位の僅かな寂しさが滲んでいた。
勿論一緒に行こうかと聞いたに決まっている。そんな姫の様子を見て放って置ける訳が無いし、二人の戦いにはいつも必ず付き添っていたから。こんな状況でも従者の義務は果たさなければと、その時咄嗟に思った。
だけど、姫はそう言う私の申し出を拒み、今宵は鈴仙と永遠亭にお留守番していなさいと私に申し付けたのだった。
「貴女の想い人は鈴仙なのだから」姫は立ったまま私の頭を撫でながらそう言った。でも、私の中には主人と想い人、どちらにも同じように愛があり、私が優曇華に恋心を抱いているとは言っても、姫の従者としての責任と義務を捨てるつもりは無かった。
だから私が姫の言葉に反論の言葉を投げかけながら、そんな姫への想いを伝えても、やはり姫の気持ちは変わらなかった。
 「鈴仙を大事にして」その一点張りの主張を続ける姫。最初は頑固になっているのかと思った。でも、やがて私は姫の瞳に、これまでに無いくらいの強い意志を宿していることに気が付く。姫の決心は私が思った以上に堅く固まっていたのだ。
私が決心したから、姫も決心をしてくれたのに…。私は姫の意思を知らずに勝手にお節介を焼いていたことを知って、それ以上何も言え無かった。
 「私は衣食住以外のこと以外なら、もう一人で出来るから。だから、今宵は一人で妹紅の処に行かせて…」
姫はそう言うと、部屋の障子を開ける。そこから見える大きく浮かび、周りの星々を覆い隠してしまう位に夜空一面を煌々と照らす満月。夕日に変わって空を支配しているその月を、姫は黙って眺めた。そして私に振り返り
 「月が綺麗…。この月明りなら夜道も安全よ」
そう言ってニコリと姫は笑ってくれた。
「それに、今日は永琳と鈴仙だけなのよ?…こんな機会なんてもう二度と無いと思うけど?ここまでするのに苦労したのよ、てゐと一緒に考えたんだから」
その姫の言葉であの時の「応援した」の意味がその時私にはしっかりと分かった。でも姫の行為にお節介では無いか、とは言えなかった。何故なら私はその時、一瞬だけありがみを感じてしまったからだ。
 
 
 「成長したわね…」
私は風呂あがりの浴衣姿で、研究室の椅子にもたれ掛かっていた。
姫に諭される日が来るなんて思いもしなかった。だから、その時の姫の言葉と態度は凄く印象的で、そのせいで私は、姫が自分から私に頼らなくなっていることを今更ながら実感している。ずっと姫の成長を見て来ただけあって、いくら私でも子離れにも似たその感覚には、やはり寂しいと感じていた。
その上、姫にここまで優曇華に想いを伝えるお膳立てをされるなんて…。今は、ありがたみを感じてしまった自分が恥ずかしかった。
 「どうしましたか、師匠?」
優曇華は私の前に湯呑を置きながら心配そうに聞いた。
 「ん?あぁ、何でも無いわよ」
私は、咄嗟にあたかも何の問題も無いように振舞った。優曇華が私の研究室の中に入っていることにすら、気が付かないほど思考に耽っていたのに。
 「…そうですか。ならいいですけど…」
優曇華は私を見ながら、相変わらず気にした様子で立っていた。
その様子が可愛い。姫の変わりなどでは無い、私の大切な掛け替えの無い弟子がこうして気に掛けてくれている。そして私の想いの在り処。この子がいれば、そんな寂しさも乗り切れる気がした。姫が認めてくれた関係までにはまだ至ってないけれど。
 「あら、ところで優曇華は何故勝手に入って来てるの?」
私はその持って来てくれたお茶を啜りながら、優曇華を見上げて聞いた。
途端に表情が凍り付く優曇華。
 「あ…そ、その…」
しどろもどろとうろたえながら、必死に優曇華は答えを模索している。ああ、その様子にまた嗜虐心がそそられてしまいそうだ。
でも、そんな遊び心を私は抑えた。今は優曇華を苛めているような場合では無いから。姫とてゐが、折角考えてくれた機会を私はなんだかんだで逃したくは無かった。今逃したら、きっと後悔する。
 「優曇華、取り合えず今はお風呂に入って来なさい。後で話があるから」
 「え…はい。お薬の調合ですか…?」
怒られると思っていたのだろう。私の言葉に優曇華は私の表情を窺いながら聞いた。
 「違うわよ、それにもう終わったじゃないの。じゃあ、待ってるから」
私は湯呑を置いて、優曇華を見て言う。
 「はい。あ、湯呑は後で片付けますから」
優曇華はそう言ってとてとてと小走りで研究室を出て行った。
 
「さて…」
私は、湯呑のお茶を一口だけ含むと椅子から立ち上がる。
 「すうー…はあ…」
研究室の真ん中に立つと、これからいよいよ優曇華に気持ちを伝えるだけあって、私は昂る気持ちを鎮める為に、深く深呼吸をする。
すると、不思議に今までの永遠の時間の中で生きて来た記憶が走馬灯のように、私の脳内を駆け巡り、当然だけど、その中にはもう今では追われ身となった月で出会った者達の記憶も含まれていた。
そして、その膨大な記憶の中にも私の中では最近の記憶だったが、優曇華との記憶も含まれていた。私は、それを他の人物とも記憶よりもじっくりと時間を掛けて思い浮かべて行く。
皮肉かな、もう月に関しては興味が無いと心に決め、姫様以外の月の者とは交わることが無いと思っていたのに、月から逃げて来た優曇華に名前を付けて、その上あっさり匿った上に、今その優曇華に想いを伝えようとしている。
ホント、永く生きても人生とは分からないことだらけだと思う。
私は全て回想し終え、再び最初に出会った時まで遡った。気が付けばそんな自分の想い人との出会いを、今はひしひしと噛み締めている。
 「愛してる、優曇華…」
いや、これはちょっと単純過ぎるかしら。
 「優曇華…。こんな私だけど貴女を愛してるの。一緒に居て下さい」
何だかイマイチだ。だけど、意外とすんなり来る言葉が思い浮かばない。
 「貴方の瞳に狂わされたの。…愛してる」
全然ダメだ。自分で言っておきながら、気持ち悪い。
台詞を考えているだけで、かなりの時間が経ってしまった。流石にそろそろ、優曇華もお風呂を終えたところだろう。
私は上手いセリフが浮かばないせいで、溜息を吐いた。こう言うのはオバサンの私より、ピチピチの優曇華の方が得意そうな気がしてならない。あの子はロマンチストって、姫が言ってたっけ。
 
その時、研究室の扉がノックされた。
 「どうぞ」
つい癖で答えてしまう。おかげで、最後の心構えが出来なかった。
 「失礼します」
私がそう言ってすぐに、扉が開く。ぶっつけ本番など出来る状況では無いのに、今回もはやり朝と同じことになってしまった。もうこの際だから私は、開きなおり優曇華を迎えることにした。上手い台詞すら考えられなかったし。もうその場で口から出た想いを言葉にして伝えるしかない。
私はベッドに腰かけて優曇華を見た。
 「遅くなってすいません」
そう言う優曇華は水色の簡素な水玉模様の浴衣を着ていた。
私の浅葱色の渋い浴衣と違って、その浴衣は目立たず目立ち過ぎてもいない地味な物だ。でも、かえってそのお陰で優曇華の清楚な感じが上手く引き出されていて、その綺麗な髪は、風呂揚がりと言うだけあって腰まで綺麗に落ちている。それは部屋の明かりを受けてキラキラと光りを帯びていた。
すらりと伸びる背筋、それでいてなかなかの膨らみを持つ胸元。
和服美人と言う訳ではないけれど、目の前の優曇華は息を呑む程の美しさだった。
 「綺麗ね、優曇華…」
私が感心した声で言う。
 「え、そうですか…?」
優曇華は私の言葉に、頬を染めながら聞いた。
 「ええ…凄く。月みたいよ、貴女…いや、それ以上ね…」
褒め過ぎでは無い。ホントに月の様な美しさだった。
私はつい、その美しさ見惚れてしまう。私は月に見惚れたことが無い。何故ならもっと美しいモノがこの幻想郷にはあるはずだと、そんな勝手なことを思っていたから。でも当たっていた。今、その存在が私の目の前にいる。
 「ほ、褒め過ぎですよ…」
優曇華は見惚れられたことと、褒められたことに対して頬を赤くして答えた。
 「あら、事実なのに」
私は、そんな優曇華がどうしようも無い位に可愛らしくて、クスクスと可笑しそうに笑った。
 「そんなこと無いですって〜…」
 「フフッ…。まあ、貴女の師匠の言ったことなんだから、事実は事実よ」
私は笑いながら言う。
 「あの、師匠…。お話をお願いします…」
優曇華はこのままでは、弄られると思ったのか話題を変えようと持ちかけた。私はそれに少し名残り惜しさを感じる。もっと見ていたかった。そして弄りたかった。
 「ええ、そうね。…ね、隣に座って」
私は、自分の簡易ベッドの私の隣に腰掛けるように促す。
 「え、はい…」
私の「隣に座って」にピクリと反応を見せる優曇華。そして、甘えん坊の優曇華は、すぐに嬉そうに私の隣に座ってくれた。
私は笑顔でその髪を撫でた。優曇華も私の隣に座れて嬉しそうに、私に撫でられてくれる。耳が嬉しそうに動いたのがさらに可愛い。
 「でね…優曇華」
私は優曇華の髪を撫でていた手を、今度は肩に掛けて言う。
 「はい」
優曇華は私を見た。その大きな瞳には私がしっかりと写っている。その優曇華の瞳の中に写っている自分の姿を見て私は自分が真顔になっていることに気が付いた。ああ、やはり私は緊張しているんだな…。
優曇華も、私の様子を見て只ならぬことを悟った。同じように真顔になり、私を黙って見つめる。
 
 「―――あのね…」
 
頭の中では浮かんでいると言うのに次の言葉が出ない。
―――貴女が狂おしい程に愛しいの。その存在を私だけのモノにしたい。他の誰にも渡したく無い。優曇華の全てが欲しい。全てを感じたい。
内側に渦巻く独占欲を言えばキリが無いのに、大切な気持ち「愛している」この一言だけがどうしても心の中から出て来なかった。
 
心の奥深くに、ずっと埋もれていた気持ちを外に吐き出そうとしているのに。こんなにも、愛しさが募っているのに。
目の前に、手を少し伸ばせば届く処に愛しい人はいるのに。
 
こんなに苦しい思いをするなら、気持ちが芽生えた時から我慢するんじゃ無かった。
 「……」
 「……」
お互いとも視線を逸らそうとはしない。
その時だった。
―――ガシャン!!
姫から貰い、書類の山に置いておいた栄養ドリンクの一つが前触れも無く床に落ち、音を立てて割れた。
 「ひゃあ?!」
優曇華は糸が切れたかのように驚いて、私に抱き付く。
 「?!」
私はいきなり瓶の一つが割れたことに驚いた上に、優曇華にも抱き付かれて優曇華以上に驚いた。そして慌てて床を見る。
折角の栄養ドリンクはもう粉々にガラスが飛び散って、中身が漏れ出して床の上に大きく広がっていた。
私が、部屋の中に置く場所が無いとは言え適当に置いていたせいだ。姫が少しの善意と僅かな思いやりの心を持って、私と優曇華に宛ててくれた栄養ドリンクは、今や不安定な書類の山のてっぺんに立つ一本だけ。
まだ後一本残ってはいても、二人分落胆した。
 「……」
そして次に私は、自分抱き付いている優曇華を見た。
 「あ…」
優曇華はやってしまった、と言いたげに、目を見開いて私を見つめていた。
 「優曇華…」
こんな時に、こんな近くで触れ合っている。何と言う偶然なのだろう。しかし、それは素直に歓迎出来ることでは無かった。自分から告白して抱き締めたかったのに…。私は優曇華のその紅い瞳を見つめる。もう、狂ってしまった方が楽かも知れない。
 「す、すいません…」
今までお互いに抱き合ったことはあったけど、優曇華から抱き付いて来たことは初めてだった。そのせいか、慣れない優曇華は私から離れようとした。
 「待って…」
だけど、私はその優曇華を離れないようにとしっかりと両腕で抱き締めた。もう、この際だから気にしないことにしよう。私はここで思いを伝えることは変わらないのだ。
 「…はい」
優曇華も、もう私の言うことは分かったようだった。ゆっくりと顔を挙げた。
 
そして、私は一度目を閉じた。私は実際決心しても、やはり一つだけ心配なことがあったのだ。それは、この師弟関係が終わってしまうのではないのかという些細で、そして大きな悩みのことだった。
私は、そう言う関係になっても師弟関係を続けたいと思っている。それの関係にこそ、今の私達の原点があるからだ。だから、それを失いたく無い。出来ることなら、いずれやって来る不可避の別れまでそんな関係を続けたいと思っていた。
勿論、二重の関係を続けるのは大変かも知れない。
だけど、私は師弟関係を失うくらいなら、大変でもそんな二重の関係を選ぶつもりだった。
優曇華は、そんな私の想いを受取ってくれるだろうか…。
 「……」
優曇華の手が私の手を優しく握った。
 「…大丈夫です、師匠。私は貴女の弟子、貴方のモノであり続けますから…」
優しく微笑み優曇華は言った。
私は嬉しかった。優曇華が私の葛藤を理解してくれたことに、私のそんな迷いを断ち切ってくれたことに。
やっぱり、優曇華は私の自慢の弟子だ。こんな立派な弟子が辞める訳が無い。何で想っていたのに信じてあげられなかったのだろう。
 「優曇華…」
私は、その手を強く握り返した。
 「―――優曇華。私は貴女を愛しているわ。これからは、弟子としてだけでは無く…私の恋人になって下さい」
不器用な言葉。でも、さっきまで考えていた台詞よりもずっといいものだった。
私の告白に優曇華は顔を綻ばせる。
 「…私も師匠を愛してます。これからもお薬以外のことも、いっぱい教えて下さい」
優曇華は嬉しそうに、そして顔を赤くしながら私に抱き付いた。
 「ええ、いっぱい…教えてあげる…」
私も、途端に今までのモノが色々と吹っ切れてた感じがして、顔に笑顔を浮かべ優曇華を抱き締めた。その時は心の奥の想いを言っただけに、私は優曇華と結ばれたことを心から喜び、そして幸せに笑うことが出来た。
この子と生きて行ける、私は喜びと一緒にそんな念願叶った事実を受け止め、そしてその事実が私の心の中を、今浮かべている笑顔と同じ溢れそうな幸せで一杯に満たした。
 
 
 
 「ねえ…優曇華」
私は優曇華と抱き合いながらお互いに手を握り合って、優曇華への愛と体温を感じながら訊いた。密着していることで、トクトクと静かに私の胸に一定のリズムを刻み、伝わってくる優曇華の心音が心地よい。
 「なんですか、師匠?」
優曇華は私に身を委ねながら聞き返した。
 「…貴女、さっきお薬以外のことを教えて欲しいって言ったわよね…」
私は自分の体温と鼓動がどうしようも無い程まで上り詰めているのを感じる。
そして、言葉に露骨に表れてしまう位、どうしようも無い程に優曇華を求め始めていたことも。
私の様子と口調から優曇華も、私が望んでいることの知ったのだろう。
 「…はい。その、恋人としての嗜みと言うか…」
そう言って顔を赤くする優曇華も、私と同じように体温が上がっていた。浴衣の生地越しにその熱くなった優曇華の肌を感じる。この子の綺麗で繊細な肌は、今はきっと熱を帯びてほんのり赤みを帯びていることだろう。
私は、優曇華もまた私みたいに「そう言う関係」にも興味があるようで私はその証拠に、優曇華の鼓動がどんどん高鳴り始めていることに気が付いた。
 「キス…かしら?」
私は率直に聞いた。
 「はい…」
優曇華が頷いて、その綺麗な髪が揺れた。髪から漂う自然な乙女の良い香りが、私の鼻腔を満たす。
 「そう…他には?」
私は顔を挙げて、その髪を少し手に掬ってはその髪の香を味わいながら訊く。
 「…えっちな、こととか…」
優曇華が、私の胸の中で顔をずらして私の顔を見ると答える。その頬は紅く染まり、優曇華のその紅い瞳は期待と不安で揺れているのが分かった。
掬っていた髪から手を離すと、それはハラリと綺麗に元の髪に戻る。
「私に委ねてくれるの?」
今度はその頬に触れながら聞いた。
 「師匠なら…任せられるかな、って…」
私を見上げながら優曇華は言う。その私のことを心から信じてくれているその言葉が嬉しくて、優しく喜色を湛えながら頷いた。
 「そう…。じゃあ、いいのね?」
私が優曇華の顔を覗き込みながら言うと、優曇華は黙って頷いた。
 「お願い、します…」
消え入りそうな声で、私に身を預けた。私は頬を撫でていた手を、そのまま頬で止めると顔を近付ける。とは言え、言葉すら交してないのにまだ唇を重ねるつもりは毛頭無い。
 「…女同士でも、こう言う時はカウントされますか…?」
優曇華は私が目を閉じる前に、小さくか細い声で聞いた。その身体は、私と違って緊張で固まっていることが分かる。私はお互いの吐息が顔に掛かる程にまで近付いたまま、動きを止める、
 「優曇華が望むなら…」
お互いの顔が近くにあり過ぎて焦点が合わないせいか、優曇華の顔がぼやけて見える。でも私がそう言った時、しっかりと優曇華の瞼が閉じられたのが分かった。
私は優曇華の身体を、両手でしっかりと抱き締める。優曇華の身体は余計にそのせいで固まってしまう。
 「力、抜いて…」
私は落ち着かせるように囁いた。
そして私と優曇華の唇の、僅かな距離を少しずつ進んで行く。焦らしている訳では無い。キスをするまでにも、お互いの吐息で愛を感じたかったから。それだけだ。
私も目を閉じる。それがセオリーだと思った故の、自然な行為。
 「愛してる…」
私は唇が優曇華と触れ合う前に、最後にそう一言だけ優曇華に聞こえる位の声で呟いた。
 
―――そして、私の唇が優曇華の唇と重なった。
夜伽話のような自然なキスでは無かった。唇を付けてその優曇華の柔らかい唇の感覚を覚えた途端、私まで一気に緊張してしまったから。今思えば、ホントにぎこちない接吻だったと思う。
だけど、その時私の頭の中では飽和していた様々な想いが一気に弾け飛んで、白くなって何も考えられなかった。でも、不思議と心温まる感覚に、私はもっと優曇華と口づけを交わしていたいと思った。
 
 「……」
 「……」
かなり長いキスだったと思う。唇をお互いに離した後、緊張し過ぎていたせいか一気に糸が切れたたように、二人でベッドに倒れ込んだ。
そして、そのまま見つめ合う私達二人。絡み合う視線だけでも、顔が蒸気しそうだ。
 「初めて、だった?」
私が見つめあっていた時、不意に聞いた。
 「はい…」
優曇華は、私がずっと生きているためにこう言う経験があることは察しが付いていたのだろう。聞かれれば答えていたが、この娘は私の経験については聞いて来なかった。私は答えたら優曇華は嫌な気分になるのでは、と危惧していただけにその優曇華の気遣いは嬉しい。
 「頂きました…」
優曇華の髪に触れて、嬉そうに笑いながら囁く。
 「御馳走様、じゃないんですか?」
優曇華も笑いながら同じような囁きを返した。
 「だって、優曇華のファーストキス、頂いたんだもの。だから頂きました」
私はそのまま優曇華の唇をゆっくりと、その暖かくて柔らかい感触を指で感じながらなぞった。
 「……」
私は小さく微笑んだまま、無言でそんな愛撫をしている。優曇華もくすぐったそうにもじもじと動いていたけど、特に嫌がる様子も見せずに黙って目を閉じていてくれた。
しばらく愛撫を続けた後、私はその唇から手を離すと優曇華が瞳をゆっくりと開いて、その両手で唇を愛撫していた私の手を取ると言った。
 「あの、師匠…。もう一度、していただけますか?」
優曇華の顔が期待に染まっているのが分かる。
 「いいわよ…。優曇華の欲しいだけ…沢山してあげる」
いつもすぐに顔を赤くしてしまう優曇華が、今はひたすら私を求めてくれるのが嬉しくて、私はしっかりと優曇華の手を握り返すと、再び顔を優曇華に近付けた。
私がリードした最初のキスとは違い、今度は優曇華からも私に顔を近付けて来てくれた。
そのまま、お互いが惹かれあうように、私達はお互いの唇を重ねた。二度目だったけども、相変わらず優曇華の柔らかな唇は、私の理性を蕩けさせる魅惑を与えてくれる。
その唇は、今はまだ私以外の者では染められてはいない。
そしてその身体も。出来る事なら優曇華の全てを私で染め上げたい。そしてずっと他の存在では染めさせたく無い。
 「んっ…ハァ…うどん…んんっ…」
 「チュ…んっ…好き…です…んう…」
だからその時の私達のキスは、お互いの愛を確かめ合うように唇の感覚と形を心に刻み込むように強く重ね、私の優曇華への愛と独占欲、そして優曇華の愛情がぶつかりあって互いに触れ合っていない部分を残さないようにと唇の形を変えては、再び唇を強く重ねあうような激しいキスだった。
幸せで満ちて行く。
こんな不純な感情だらけだったのに、キスを深く交わすごとに私の中には幸せがつもって行くのに、そんな溢れそうな幸せは決壊するどころか、じんわりと私の心の中に広がった。
もう容量は一杯。そして身体の方は胸を満たす幸福感に比例して、熱くて仕方無い。
この幸せのせいだろうか?身体の奥から無限に熱と共にもどかしさが湧いて来た。
 「ぷはっ…ハアッ…」
 「はあ…はあ…」
私と優曇華は、自分達の呼気の限界を悟ると一気に唇を離した。
―――熱い。
一刻も早くこの熱を発散させたい。
優曇華の吐息が首筋に掛かる。それは凄く熱くてそれでいて荒々しい。
私も同様だった。優曇華の髪が私の吐息で拭き上げられる位にまで、呼吸が激しい。
抱き合っていて優曇華の触れ合っているところや身体の奥は、すっかり汗ばんでいるのが分かる。
優曇華も幸せなのかしら?そんな思考をいた時だった。不意にまた身体の奥から熱が溢れてしまった。
 「ねえ…このまま、しない?」
もう我慢出来なくて、私は優曇華を抱き締めると聞いた。優曇華の浴衣が乱れ、その綺麗な片方の肩が露わになっている。そこから見える優曇華の肌は、予想通り赤く熱を帯びていた。
 「はい…私も、もう我慢できません…」
蕩けた目で息を上げながら私の申し出を受け入れる優曇華。
 「あら…。なら良かった。…でも優曇華も積極的なのね」
私は優曇華から一旦離れ、身体をベッドの上で起こして見下ろして笑いながら言った。
 「そ、そんなことは…。師匠だって、少しは恥ずかしくても…」
 「…もう、十分恥ずかしいわよ」
私は優曇華の手を取ると、それを自分の胸に置きその昂る鼓動を伝えた。その鼓動を聞いて、黙って私を見つめる優曇華。私はそんな彼女の顔を愛しさの募った笑みで見ると
 「分かるでしょう…?私も恥ずかしいの…」
 「すいません…考え無しでした…」
優曇華が気まずそうに、目を私から逸らして私の胸から手を離そうとする。私は笑顔のままその掴んでいた優曇華の手を離した。
 「別にいいのよ…。少し誠実さを見せるべきだったわね…」
私が優曇華の身体を抱き起こし、その身体を大切そうに抱えた。ベッドのスプリングがその動きで少し軋み、私と抱えられている優曇華の身体も揺れる。
 「じゃあ…。そのお詫びと言ってはなんだけど、優しく抱いてあげる」
 「師匠は悪くないのに…」
私の笑顔と言葉に、優曇華は少し拗ねた様子を見せた。
そりゃ、私だって優曇華の身体を好きなようにしたい。恋人になってそう言う関係になったのだから、ベッドの上でやりたいことだって沢山あるに決まっている。でも、そんなことで私が優曇華との愛を確認することは出来るとは限らない。それに、もし優曇華が嫌だと感じてしまったら?
そんな妄想の中でしか実践出来そうに無いことを、優曇華と言う恋人に出来る訳が無かった。何より、今夜は姫やてゐのお陰で迎えることの出来たお互いにとっての「初めての」夜なのだから。
 「じゃあ、私がしたい。それでいいかしら?」
私が微笑みながら言うと、その言葉を待っていたのだろうか、優曇華は拗ねた様子を一転させて顔を赤くしながら私を見上げた。
 「…はい。お願いします…一杯愛して欲しいです」
 「優曇華…」
私は優曇華の本音を聞き、優曇華が私の愛を求めていたことを知った。
なら、私も愛してあげないと…。そう心の中で思いながら、抱いていたその身体をゆっくりと降ろして、ベッドの向い側に優曇華を座らせた。
そうすると、私達は自然と座ったまま向い会う形になる。
 「じゃあ、始めましょうか?」
 「……」
私の合図に、優曇華は私を見つめたままコクリと頷いた。
そして、私は優曇華の唇に軽く口づけて甘酸っぱさを感じながら、その唇の温もりも一緒に少しだけ味わう。
やっぱりこう言うキスは好きだ。濃厚なキスにも魅力はあるけど、愛より先にあ互いの温もりをすぐに確認出来るから。
やがて、その唇を離した。そして私達は見つめ合う。
もうそんな甘酸っぱさは、これからは味わえないから。これからあるのは、濃密で心が蕩けるような甘いモノだけ。それも良いけど、だからこそそんな甘酸っぱさを最後に感じたかった。
 「またして下さいね…」
優曇華も、そんな甘酸っぱさをこれからの快楽で忘れたくはないらしく、私が浴衣の胸元と帯に手を掛けるとそんなことを言った。
 「ええ…。これが終わったら、ね…」
艶を含んだ声で言う。
私の手を掛けている優曇華の胸元は、なかなかの膨らみを帯びていた。でも、それはまだ成長を感じさせる未発達の膨らみ。ブラを着けていても、しっかりと生地越しに伝わるその柔和な感覚は、私に優曇華の乙女を実感させた。
私は右手に当たる柔和な胸元の感覚を味わいながら、ゆっくりと、その浴衣の帯を解いて行く。
私と優曇華は緊張と飽和した感情と気持ちのせいで既に声が出せない。
私は慣れてはいたけれど、その行程を味わいたいがために態々時間を掛けて帯を解いて行く。シュルシュルと、布の擦れ合う音だけが部屋に響いた。
やがて、帯が全て解かれるとハラリと音を立てて、優曇華の水色の浴衣の前部が左右に開いた。
 「……」
私は両手をその浴衣の中へとゆっくり滑り込ませて、両肩の内側から両手で浴衣を優曇華の肩から下ろした。すると優曇華の上半身の白い肌が全て晒し出され、思わずその美しさに私は息を呑んだ。
優曇華は恥ずかしそうに瞳を逸らし、私を見ないようとしていたけれど、肝心の私はと言うと不可抗力と言うか、その時に優曇華のほのかに朱を帯びた肌が目に飛び込んで来て、私はその身体に魅入ってしまっていた。
 「や…、恥ずかしいです…」
私に見つめられているせいか、優曇華の顔がみるみるうちに真っ赤になって行く。
 「だって…本当に綺麗なんだもの…」
私は感心した吐息を洩らして、優曇華の吐いている浴衣の下も無意識のうちに脱がせてしまう。それくらい、今の優曇華は美しかった。何であれだけ一緒にいたのに気付かなかったのかと思うくらいに。
 「私より師匠の方が…」
 「ううん。私よりずっと可愛いし、綺麗よ。そう、…自信を持って」
ゆっくりと優曇華に近付くと、私は言った。
 「ん…」
優曇華の首筋に舌を這わせると、私は首筋と鎖骨の間を往復するように舌で舐めて行く。
 「し、しょっ…うっ…んっ…」
優曇華は少し驚いた様子だったけど、やがて瞼を閉じてその愛撫を受け入れた。背中に廻している手から、優曇華の背筋が波立っていることを知る。ただ愛しくてした行為だけでも、もう優曇華は感じている。
私は、その優曇華の様子を知ると、今度は大胆に大きく首筋を舐め上げるようにして舐めた。私の唾液が優曇華の肌を濡らしているのが、嬉しくて私までゾクゾクと感じてしまう。
 「ひっ…やっ、そんな…恥ずかしいです…」
動物のような私の舌使いを知って、優曇華は恥ずかしそうに言った。逃げるように顔を上に向けるが、それでは返って私の舌の動く場所をさらに与えただけだった。私はさらに大きく大胆に舐めあげる。
 「ひあっ…っ……ふぇ…」
そして、優曇華の意識が散漫になっている隙に、背中に廻しているその手で優曇華が付けている白いブラジャーのホックを外した。
優曇華には清楚な色が似合うから、この純白の下着を外すのは少し惜しい気もしたけどもう躊躇してはいられず、私は一気にそのブラジャーを優曇華の胸から取り払った。
露わになる優曇華の形の良い胸。
私は、優曇華の首筋から舌を離した。
 「あ…」
優曇華も自分の胸が外気に晒されたせいで気が付いたのだろう。覚悟していたこととは言え、その自分の胸を見て恥ずかしそうにしている。
 「大きいわねぇ…。このまま行けば、私を抜くかしら?」
そう言って、その豊かな双丘を両手で優しく持つようにして握ってみる。
その二つの膨らみは、まだ少し私の手からはみ出すと言った大きさで、まだまだこれからも成長していくことを物語っていた。
 「師匠は流石に無理ですよ…」
顔を真っ赤にして言う優曇華。その眼はしっかり私の胸を捉えていた。
 「そうでも無いわよ…。こうすれば、ね…」
そう言うと私は、ゆっくりと手の中の膨らみを揉み解し始めた。
 「あっ…そんな…こと、でっ!!」
 「なるんじゃない、かしら?」
私は、力加減を加えながら胸を揉むと言った。優曇華の声が吐息と共に洩れている。
 「んんっ…ふあ…あぁ……ぁ…」
優曇華は気持ち良さそうに目を細めている。でも座ったままでは優曇華は態勢を楽に出来ないせいか、こころなしか辛そうだった。だから、私はゆっくりと優曇華をベッドに押し倒した。
 「んっ…」
優曇華が私を見上げる。その瞳から発せられる視線が、今の私には何とも言えない。だから背徳感のような物を覚えながらもそのまま、少し痛まない程度に力を込めて優曇華が気持ちいいように揉んだ。
 「んあ…あぁ……師匠…いい、です…」
優曇華も、そんな私の気持ちに素直に答えてくれた。そんな素直な優曇華がさらに可愛い。
私は、胸を愛撫する範囲を狭め、同時にその愛撫の仕方を手全体から指先へと変えて行く。
 「ひゃ…ああっ!!」
優曇華も快感の波が強くなって行くのを感じているらしい。そして、私は胸全体からその中心のピンク色の綺麗な突起へと愛撫の仕方を変え、その胸の突起を指先で摘まんだ。
 「あああっ!!…ひゃあ……あっ!!」
既にそれは固く尖っている。私は優曇華の嬌声を聞きながら、それだけでビクビクと跳ねてしまう身体に覆い被さって、それを指で優しく周りの膨らみと一緒に捏ねくり回した。
 「ひゃああ…あ…うあ…」
 「気持ち良さそうね…」
私は愛撫を続けながら聞いた。
 「はい…凄く…いい、です…ぅ…」
私は、身体を動かして顔を優曇華の肩から胸の前へと下げた。そして目の前に現れた綺麗なピンク色の固い突起を、軽く舌で突く。
 「ひゃうぅ?!」
電撃のように、身体をビクッと跳ねらせる優曇華。これだけでも、こんな感度がいいのだ。私は、もっと可愛い優曇華が見れるかもしれない期待に胸を弾ませながら、その胸の突起に吸い付いた。
 「ん…ふっ…」
私は、相変わらず両手で胸を愛撫しながらも口の中でその突起を舌で転がす。
 「ああ…っん!!…やあ…」
身を捩じらせて、波のように間髪与えず堪える快感に優曇華は耐えている。
そんな私の与える快感に負けている優曇華の様子に、私は多いにそそられた。
―――もっと、優曇華を鳴かせたい。
―――優曇華に快感を教えてあげたい。
私は、だんだん自分の理性のネジが外れていくのが分かった。このままじゃ、収まりが付かなくなって、優曇華の意思を無視してさらに激しくしてしまう。
だけど、私はそれを許容した。私を狂わせてしまう程、こんな可愛い優曇華が悪いのだ。そう、勝手に解釈しながら私は強く優曇華の突起を吸いあげた。
 「やあああ!!!ひゃああああ!!!」
優曇華はいきなりの不意打ちの強烈な快感に、大きく喘ぐ。
 「ンチュ…チュ…クチュ…」
もう全く覚えて無いけれど私は、まるで赤ん坊に戻ったみたいに一心不乱にその胸の突起を強く吸い上げた。柔らかい胸の感覚が唇に強く押し付けられて気持ち良い。
 「ああああっ!!師匠、んやああ!!好き、好きですぅ!!」
優曇華が、大きく乱れながら、私の頭を抱いた。私はそんな優曇華に答えるかのように激しく胸を揉み、強く突起を吸い上げる。
僅かに見えた優曇華の肌は赤く火照っていてその上汗ばみ、その香りがさらに私の脳髄を刺激して残った理性を絡め取った。
 「優曇華…」
私は呟き、優曇華の突起を甘噛みする。カリッと少し痛そうな音を立てて。
 「ひゃああああん!!!だめえええ師匠おおお!!!」
だけど、既に快楽に浸っていた優曇華には快感。私の頭を痛いくらいに強く抱きしめて優曇華は大きく喘ぎ、感じていた。
そんなお互いにお互いの身体に溺れていたせいで、私は優曇華の下の口がヒクヒクと切なそうに動き、濃厚な蜜を垂れ流していることに気が付かなかった。そのまま脳髄に直撃し続ける優曇華の嬌声を聞きながら、私はさらに責め立て続ける。
 「あああああっ!!!!何か、き、ます…!!!あ、嫌…あっ……だえめええええええええええええ!!!!!!」
私が優曇華の切ない声を無視して、胸ばかり責め立てていたせいで、優曇華は胸だけで達してしまった。
 「…あ、ハア…ハア…」
優曇華の私の頭を抱く手と、身体から一気に力が抜ける。達したことを知った私は優曇華の胸から顔を挙げて、その身体の上に四つん這いの態勢になった。
 「…イッちゃった?」
私は、全身をグッタリとベッドの上に投げ出している優曇華を見ながら聞いた。
 「…はい」
顔を真っ赤にして優曇華は答える。他人にイカされるなど未知の領域だった優曇華は、どうやらまだ実感が湧かないらしくて混乱しつつも蕩けた目で私を見つめた。
私は、そんな純粋な優曇華にその実感を与えたくて秘所に垂れ流す程に溢れている蜜をベッドリと右手に掬うと、優曇華に見せた
「あら…ホントね。こんなに愛液があるんだから…」
私はニヤリと笑いながら言う。優曇華は相変わらず蕩けた目でその私の手から垂れる蜜を見て
 「私の…」
小さく呟いた。
 「そう…。貴女のよ」
私はそう言って、自分の手に着いている蜜を優曇華に見せつけるようにして、舌でゆっくりと時間を掛けて舐めとって行く。
 「あの…」
優曇華はそれをぼんやりとした目で見ながら聞いた。
 「ん…?」
私は、全て舐め終えると業とらしく、気が付いていないフリをしながら答えた。
優曇華は、自分の熱くなった秘所にじれったさを感じているのか、私が聞くと黙って内股の、両方の脚をモジモジと擦り合わせながら黙って私を見た。
私は、先程優曇華が達したにも関わらず、自分の着ている浴衣も下着を全てを脱いだ。
そして私は、切なそうに私を見て、求めるにも恥ずかしさ故かなかなか言い出せない優曇華の上に再び覆いかぶさると
 「熱いの…?」
そう言って私は、優曇華の蜜に濡れるその秘所に軽く触れた。
 「濡れていて嫌です…」
優曇華は私に触れられて、顔を赤くして言う。優曇華は言葉の割には嫌な感じを見せてはいなかったけれど、私はその言葉を聞いた途端、早く楽にしてあげたいと思った。
 「ふふ…、なら綺麗にしてあげる」
私が顔を優曇華の秘所へと移して言う。
 「ふえ?あ、師匠なにを…」
優曇華は私の行動の意味が分からないとばかりに、顔を挙げて私を見た。
私は、優曇華の綺麗な秘所を食い入るように観察していた。達したばかりだと言うのに、目の前の優曇華の秘所は今だに蜜が残っていて、優曇華は意外と快感に溺れやすい素直な子なのでは?とそれを見た私は思った。
 「それに…このままは嫌でしょう…?」
そう言った瞬間私は、優曇華の秘所に舌を這わせる。
 「ひゃあああ?!」
舌が秘所に触れた途端に、優曇華は私の行為に身体を跳ねらせる。私はその舌に伝わる不思議な味を感じながらそのまま舌で、優曇華の残った蜜を舐め取って行く。
 「あ、ダメ…」
耐え切れず閉じようとした優曇華の脚の動きを遮り、私は両腕でその脚が閉じることが無いようにと固定した。そのまま優曇華が私の舌使いから逃れられないのをいいことに、私は優曇華の秘所の襞を舌で大きく舐め上げて行く。
 「ひゃああ…うっ…ひっ…」
優曇華は指を噛み、声を殺して快感に耐えている。我慢しないで欲しい。私は優曇華に大きく喘いで乱れて欲しいのだから。
 「ン…」
私は秘所に口を付けて。どんどん奥から溢れて来る蜜を自分の口に含んだ。
 「んんっ…やあ…あっああ…」
優曇華がプルプルと自分の噛んでいる指の右手を震わせながら、その私の行為に堪えている。
喘いで欲しいのだけど、そんな優曇華の様子も可愛くて私は、今度は唇を窄めるとその蜜を、音を立てて啜った。
と言うか、もうそうでもしなきゃ無理だった。優曇華の奥から留め止めも無く溢れる蜜は、私が愛撫すればするほどにその量は増していて、いちいち舐めていては秘所から流れ落ちてしまう。
そんな勿体ないことはしたくないから私は、蜜が溢れてはそれを次々と吸い取って、喉の奥へと流し込んで行く。優曇華の魅惑の蜜を一滴も残さずに味わうために、もう味など気にならなかった。
 「あああっ!!!やああぁ!!んあああぁぁぁ!!」
優曇華は口から指を離して、その手でベッドのシーツを握り締めた。そして私は、待ち望んでいた優曇華の喘ぎ声を聞くことが出来た。
優曇華の蜜を吸い、飲み、そしてその可愛らしい嬌声を聞いている私には、自分も優曇華と同じくらい興奮しているのを感じる。蜜も、優曇華の声も、今や私の脳内の理性を麻痺させる媚薬のよう。
 「ひゃああ!!だめええ……!!!!」
優曇華が赤く火照った身体を、白いシーツの上でくねらせている。
蜜が欲しい私は、理性が既に焼き切れていた。だから、そんな優曇華の切羽詰まった様子など無視して、秘所の突起を舌で突いた。
 「あああああっ!!!!何…これええ!!!」
優曇華には快感が強過ぎたのだろう。私は舌の先でその充血した突起を突くと、優曇華はそんな自身を乱す快感から逃れるように、腰を引いた。
でも、私の腕がすぐに優曇華を元の位置に引き戻した。そして、もう逃がさないとばかりに私は、顔をその優曇華の淫乱な秘所に押し付けて腰をしっかり抱くと、夢中でしゃぶり付いた。
 「やあああああっ!!!し、しょうぅぅ!!!…イイ、いいです!!!ああっ!!もっと、もっと下さ、あああああっ!!!」
優曇華はその綺麗な髪を振り乱して、快感のあまり拭うことすらままならないのか、涎を口から一筋垂らしていた。今の優曇華には清楚な姿も、大人しくて可愛い弟子としての姿も無い。
私の気持ちと愛撫をぶつけられて、ただ受け入れて喘ぐ女の子。でも、そんな様子は私をさらに昂ぶらせていた。
突起を口に含み、強く吸い上げながら咥内では舌で転がす。
すると、蜜が当然のように溢れて来る。勿論、溢れる度に私は口を離して蜜を啜って行く。でも、そのペースは繰り返す度に激しく、そして貪欲になって、もう私がどんな方法で優曇華を気持ち良くしているのか、自分ですら分からなかった。
 「ああああっ!!!ししょう…私、イッちゃ…う…!!!!」
優曇華は呂律の回らない声で言った。私は、どんどん苛烈に責めながら
 「イッっていいわよ…」
小さく囁くと、再びしゃぶり付く。
 「ああああぁぁぁっ!!!らめえええええ!!!!!」
そして、私は最後に一気に優曇華の突起を吸い上げた。
 「やああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
私がしっかりと抱き締めていた優曇華の腰がガクガクと震え、優曇華は達した。その時、優曇華の秘所が潮を噴き、私はそれを秘所に唇を密着させることで、全ての出た愛液を口に含んだ。私の口の中に流れ込む物凄い量の蜜。
私はその全てを、喉を鳴らして飲み込むと、まだ秘所の奥にあった蜜を吸い取り、口に含む。
 「あっ…あ…ああ…」
優曇華は全てを吐き出したことで熱く逆上せたような赤み帯びた身体を脱させて、胸を上下させながら荒い息を吐いていた。目は焦点が定まっていない。
私はその優曇華の頬を一撫ですると、その口に口付けた。そして、口の中に含まれた優曇華の蜜を私の唾液と一緒にその口の中に流し込む。
 「んぅっ…んっ…コクッ…」
優曇華はそれを全て飲み込んだ。私は、口付けたままそのことを褒めるようにして、髪をゆっくり撫でてあげる。
優曇華は私から唇を離すと
 「う〜…変な味です…。こん、なのを飲んでいたんです、か…?」
顔をしかめて言う。まあ、そんな美味しい物ではない。それに理由も無く自然と優曇華の蜜を私は味など気にせず飲んでいたから、その言葉はもっともかも知れない。
 「ええ、優曇華のだからね。凄く美味しかったし、可愛かったわ」
でも、私がそれでも飲んでいたのは、愛撫と言う愛のぶつけ合いをしていたからだと思う。それに、恋人のモノを嫌がる気持ちも私には無かったし。だから、むしろ愛液を飲む行為を楽しんでいたと思う。
 「可愛いは余計です…」
私が隣に寝転がると、優曇華が恥ずかしそうに私の胸の中に顔を埋めた。私はクスッと愛しさからその髪を撫でながら笑った。
 「ホントなのに…」
私はそう言って優曇華を見る。しかし優曇華からは答えは無い。
余程恥ずかしかったのだろうか?でも、いつも言ってることだしそんな恥ずかしがることでは無いと思うのだけれど…。
それでも優曇華は私の胸の中に顔を埋めたままだった。
 「優曇華〜…?」
流石にもう気になって、私は優曇華の耳元で低く、だけどしっかり聞こえるような声のトーンで聞いた。
答えは返って来なかった。その代わりに返って来たのは
 「すー…すー…」
そんな小さな寝息だった。
 「あらあら…」
私は苦笑してしまう。余程優曇華も疲れたのだろう。でも、私は少し残念だった。出来れば私も優曇華に気持ち良くして欲しかった。
まだ身体中に感触が残っている。そして同時に、かなり発散されたとは言え、まだもどかしい熱も身体の奥に宿ったままだった。
でも、ここで一人で慰めるようなことはしない。まだ私達の関係は始まったばかり。焦らずとも、こうしてベッドの上で互いを愛し合う機会はまだまだあるはずだ。
それより、また明日の為に今日は寝よう。
 「おやすみ…」
優曇華の寝顔に軽くキスをすると優曇華は「う〜…」と、寝言で唸った。
私はクスクスと、おかしくて笑うと優曇華を抱き枕に眠りに着く。
(栄養剤、結局使わなかったわね…)
私は眠りに落ちる直前に、ぼんやりとそんなことを考えた。栄養剤は次の夜の時までお預けにしておこう。
 
 
 
 
 
結局、朝まで抱き合って眠っていた。私が目覚めると、目の前には優曇華の頭があって、朝食の為にてっきり私を置いてベッドを抜け出すかと思っていた私は、そんな事実に少し安堵した。やはり、昨晩あれだけ一緒にいたのだから、朝目覚めたら隣に居なかった、なんてことは嫌だった。
でも私は自分で優曇華から離れた。別に何処かに行くと言う訳では無い。
ただ、今私達のいる私の研究室には昨夜の情愛の残り香がと熱が満ちていたから、少し部屋の空気を入れ替えたいだけだ。
そっと、私はベッドから抜け出すと遮光の為に唯一永遠亭に取り付けられているカーテンの向こうの引き戸を、音を立てて優曇華が起きないようにと、ゆっくりと開けた。
でも、予想しなかった程の強い風が窓から吹き込み、カーテンを大きく揺らして部屋の中に快晴故の真っ白な朝の光を侵入させた。
 「んっ…」
私はその光が眩しくて、目を細める。
優曇華が起きてしまう。多分皆は、今日はしばらく帰って来なさそうな気がしたから、今日は臨時休業にするつもりだったし。そしたら二人でゆっくり製薬をしようと思った。多分姫とてゐが、上手く因幡達を束ねてくれているだろうし。そしたら姫が行くと言っていた相手のあの藤原妹紅や、もしかしたら慧音にも迷惑を掛けているかも知れない。
でも、優曇華はまだ寝かせていたかったので、そのカーテンを閉めようとした時だった。
 「し、しょう…?」
優曇華が目を擦りながら、のっそりと身体を起して私を見た。
 「あ、起きちゃった?」
私はカーテンを閉めようとする。だけど優曇華は
 「あ、大丈夫です。折角だから起きます」
私を見て言った。その言葉に、私はカーテンを開け放ち優曇華のいるベッドへと向かう。私はあることを思い出したからだ。
 「ねえ、優曇華」
私はベッドに腰掛けて言う。優曇華はもそもそとシーツを擦り合わせながら私に擦り寄ってくる。
 「はい、何ですか?」
優曇華は、身体を私と同じようにシーツで覆い隠しながら聞いた。
 「昨夜は、最後にキスをするって約束、果たせなかったわよね…?」
私は優曇華の方に身を傾けながら言う。
 「あっ…そうでした…。つい、寝ちゃって…」
優曇華は思い出したように目を見開き、そして次に肩を落とした。
私にして貰うことも忘れられたけど、私はそれすらも気にしていなかった。だって、キスと同じようにまた今度の機会にすればいいのだから。
だから私はベッドに上がり、優曇華と向き合うと聞いた。
 「いいのいいの。じゃあ今、しない?」
 「はい。甘酸っぱいのを、私に下さい…」
 「勿論。これからも沢山あげるわよ…。甘い物と一緒に、ね…」
私は、自分の両手で優曇華の両手を指同士を絡め合うようにして握りながら言った。
 「はい…。私も、師匠にたくさん…あげます…」
優曇華はそう言うと、私の手を握り返した。
―――そして、手を繋ぎ合ったまま私達はゆっくりお互いの唇を重ねた。
愛を重ねるようにゆっくりと。朝の白い静謐な光が満ちる室内で。
それは、まるで二人の門出を祝うかのように清らかで、そして美しい情景だった。ここまで来るのに。いろいろ大変だったけど、こうして結ばれた今なら分かる。
そんなことが積み重なって、私達が今こうしているのだと。
優曇華と出会った日から、私達の歩みは始まっていたのだ。
 「どうしました?師匠?」
唇を離した後、優曇華は私が笑っているのに優曇華が気が付いたようで、私を見つめながら聞いた。私は笑いながら
 「ん?…幸せだなって…」
私が言うと、優曇華も笑った。そして私に抱き付いて嬉しそうに言う。
 「私も、幸せです!!」
私の研究室には、笑い声と光が満ちて、部屋の中に溢れる幸せの情景を包んでいた。
 
 
 二人の距離、完

あとがき

ホムペに移行してからの、初めての作品でした。でもその割には長編でしたね。

いつも通り幸せな話をコンセプトに書きました。だからこれからも二人には幸せな道を歩んでもらいたいですね。(続編を書くつもりは今のところありませんが…)

そして、最後まで読んで頂きありがとうございました。これからも応援よろしくお願いいたします。たま〜に短編も書く予定ですので。

次は何を書きましょうか。と言いつつ実は決まっております← 

多分また長編になるかも知れませんね。でも、皆様に満足頂ける作品を書きたいと思いますので、乞うご期待下さい。オリジナル小説も書き進める予定です。ホント最近書いてない…orz

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